2592564 ランダム
 ホーム | 日記 | プロフィール 【フォローする】 【ログイン】

刹那と永遠 - Moment and eternity -

刹那と永遠 - Moment and eternity -

・決戦当日

< 6月9日(日)快晴 >

「横浜の一番長い日」が明けました。
雲ひとつ無い快晴です。

朝、散歩のためにホテルを出ると、強い海風が吹き荒れていました。
この、季節はずれの強い風の中に「予感」が潜んでいる。
何かが起こりそうな「予感」。
そう思わずにはいられない、ざわざわした不穏な空気が蔓延していました。

6時半に起床し、山下公園 ~ 港の見える丘公園 ~ 山の手周辺 を散歩しました。
ドラマ「初体験」に出てきた「マリンタワーが正面に見える坂道」を探してみましたが、結局見つけられませんでした。(後日、場所を確認できました)
山下公園に戻ると、犬が2匹、海の中で泳いでいました。もちろん犬掻きです(笑)。
海で(しかも港で)泳ぐ犬・・・。朝から笑撃の映像。

朝食後、山下公園の端にある「大さん橋ターミナル」を見学に行きました。
いわば船の空港です。(税関などもありました)外国人の設計家による流線型のデザインは近未来空間のよう。ターミナル全体が船の形をしています。清潔で、広くて、とても綺麗です。床などに木材を使用しているため、あたたかみもあります。屋上に出ると、素晴らしい眺め!左に氷川丸、右にMM21(ランドマークタワー、アット、観覧車、ホテル群、赤レンガ倉庫など)が一望です。まぶしい日差しに光る海。穏やかに海を渡る風。まだ新しい甲板の木の匂いをほのかに感じながら、誰も来ない日陰でしばしまどろみました。

大桟橋を後にし、ランドマーク、MM21をぶらつきます。
青いユニフォームを着た人が目立ちます。みんな今日これからスタジアムに行く人たちなのでしょうか?
別行動していた主人と合流し、「面白いものがあるよ」とMM21の地下に設けられたW杯コーナーに連れて行かれました。そこでhakapyonは「とんでもないもの」に出会ってしまったのです。
中央にあるガラスケースを覗くと、見慣れた濃紺のユニフォームが見えました。袖には炎のマーク。胸には背番号「18」。日本がW杯初出場を決めた5年前の1997年、W杯最終予選、日本×イラン戦(ジョホールバル)で同点ゴールを決めた城彰二選手が実際に着用していたユニフォームだったのです。
たちまち5年前、1997年11月17日に記憶が引き戻されました。
夜中、家族で興奮して見ていた試合です。サッカーの面白さを知った試合でもあります。
この試合を見ていなかったら、今日、横浜で、W杯を観戦するなどということもなかったかもしれません。いわば、このユニフォームは、hakapyonの原点なのです。
W杯試合当日に、サッカーを観戦するきっかけとなった記念すべき試合のユニフォームに出逢うとは。なんという巡りあわせでしょう。ユニフォームの主とはピッチでは会えないけれど、今、目の前に確かに城彰二選手の足跡があるのです。胸が熱くなりました。
今日、このユニフォームを着て日本代表を応援したいな、とも思いました。そうすれば、hakapyonの4年間の思いと、今日、ピッチに城選手がいないというやるせなさが昇華できるかもしれない・・・。様々な思いがよぎり、しばらくガラスケースの前から離れることが出来ませんでした。

昼食は前日と同じく中華街の「梅蘭」でいただきました。店のお兄さん、「こいつら、また今日も来たのか・・・」と思ったかも。だってこの店、美味しくて安いんだもん!
今日は五目チャーハンとエビチリ飯と春巻です。当然、美味しかったです。

夕刻近くになりました。
ホテルに戻り、シャワーを浴びて身を清めます。いわば合戦の前の禊(笑)。
そして青いTシャツに着替えます。いわば勝負服。準備バンタン、いざ出陣です。
一応青いTシャツを着ているけれど、よく見ると「イタリア・マルディーニ@3」と書いてる(笑)イタリアユニを着た非国民の主人と、城選手と中村俊輔選手を代表に欠いて、いまいちテンションの低いhakapyonの場違いなコンビが、一路横浜国際競技場を目指します。
山下公園のホテルから、今夜の試合会場、新横浜の国際競技場まで、約一時間ほどのサイクリング。山下公園を通り抜けると、いるわいるわ、青いユニ。お祭りの法被状態です。
みんなこれから横浜国際へ向かうのかと思うと、わくわくしてきました。道行く人もなんとなくこちらを見ているようです。「この人たち、これからW杯見に行くんだ・・・」ちょっと自意識過剰気味に横浜の街をひた走ります。あと数時間後には、日本国民の大半が目にするであろう横浜国際。4年に一度の世界的サッカーフェスティバル。hakapyon達は今、その場所に向かって走っているのです。ワクワク。

一時間近く走って、ついに横浜国際競技場が見えてきました。ワクワクワク。
ampmの前にチャリを止め、徒歩で横浜国際に向かいます。・・・青い法被を着た一群がぞろぞろと歩いていくのが目に入りました。あたかもメッカを目指す巡礼者の如く。hakapyonたちもその巡礼の列に加わりました。いざ横国。いざW杯!

W杯(チケット)
★プラチナチケットを手に、いざW杯!

スタジアム前。な、なんか祭りが始まってます~(^^;!青い人、人、人~!!
スタジアムに通じる橋の上に来ると、更にチンドン風なサポーターから始まって、ペインティングは当たり前、カツラも当たり前、アフロ犬あり、羽織袴あり、何でもありのお祭り状態です。

W杯(日本サポ)
★サポーターの皆様。ハデです。祭り状態。

異様な雰囲気にhakapyon夫妻がビビリまくっていると・・・遠くからピーポパーポと騒がしい鳴り物が聞こえてきました。「な、何?!」と見てみると、デカイど派手な一群が!ロシアサポーターのお出ましです!!トランペットを吹きまくってテンション高い高い!!
日本のサポーターもロシアサポのあまりのテンションの高さにしばしボー然。さすが本場(?)!サポーティングにも歴史を感じるわあ~(??)。あちらはアウェーだけに気合が入っています。

W杯ロシアサポーター
★ロシアサポーターの皆様。みんな大きい!色が白い!

そんな入場前の盛り上がり大会にうしろ髪を引かれつつも、ゲートに並びます。斜め前に芸能人の安達由美を発見しました。頭をそり上げて、後ろに日の丸を描いた「日の丸君」もいました。なんだかわからないけど超場違いな格好をした、イケイケ姐さんもいました。もう何がなんだかわからない面子です(笑)。しかし今ここにいる人たちは、かなりの強運の持ち主なんだよね。200倍の倍率のチケットを手に入れた人たちなんだから。って自分もそうか(笑)。
もみくちゃになりなからも、ボディチェックとカメラチュックを受け(金属探知機を当てられました!)なんとか横浜国際の中に入りました。スタジアムの中から奇声が聞こえます(笑)。一体、何が行われているのでしょうか・・・恐ろしい・・・(笑)
そのうちあたりが暗くなり始め、横国がブルーにライトアップされました。ああ、美しや横浜国際。いつにもまして。そういえば、横国でのナイトゲームは初めてです。

W杯(スタジアム外観)
★早く中に入りたいっ!

W杯(万国旗)
★スタジアムに通じる坂にて。夢に見たピッチはもうすぐ。

万国旗の飾られた、スタジアムに通じる坂を登ります。足元には横浜の夜景、目の前には青く浮かび上がったスタンドが見えます。初夏の夜の、夢の砦です。ピッチに向かって気持ちが高まってきました。
2階、最終ゲートをくぐると、目の前に「夢のピッチ」が広がりました。

W杯(ピッチ)
★眼にあざやかな緑のピッチ。今宵の宴の会場です。

W杯(日の丸)
★頑張れニッポン!!

美しい芝。ブルー一色のスタンド。そして、なんともいえない、騒然とした場の雰囲気。いつものマリノス戦とは空気が違います。(比べるな、比べるな・・・)席はゴール真裏。ピッチを一望です。4年前から思い描いていたW杯のピッチの前にいるという状況が今でも信じられません。有り余る幸運です。なのになのに、誰よりもこの場所で見たかった彼がいないとは・・・(涙)いけないいけない、どうしても目の前の現実を素直に喜べないhakapyonがいます。周りのサポーターに比べていまいちテンション低。仕方ありません。自分の気持ちを偽ることなんてできません。(まあ、今思うと、実際はかなり浮かれモードで、デジカメで写真を取り捲っていたんですけど(^^;ゞ)

日本とロシアの選手がウォームアップを始めました。
見覚えのあるスキンヘッドが眼に入りました。あ~!昨晩のスタバのおじさん!やっぱり選手だったんだ!!しかも、彼はロシアチームのキャプテンでした。スペインリーグに所属している「オノプコ選手」です。そういえば、城選手がスペインリーグで初得点したとき、マークのついていたのがこのオノプコ選手だったような・・・?あのスキンヘッドは間違いない!

W杯(選手入場)
★選手入場!

そのうちに、あれよあれよと選手入場、君が代斉唱(←厳かさに感動しました)、あっという間に試合が始まりました。前半は0-0で終了。ハーフタイム時には、先ほどゲート入場の時に見かけた「日の丸君」がドアップでオーロラビジョンに写り、会場大爆笑!!なんて場面もありました。
後半は波乱万丈。hakapyonがよそ見をしているうちに、なんと稲本が得点し(一番いいシーンを見逃したマヌケなh)中田ヒデのバー直撃の超おしいシュートもあり、宮本の好判断が守りを固め、ゴンちゃん登場で会場が沸き、そして終盤のロシアの猛攻に日本は守りに守って・・・タイムアップ!1-0で勝利!!
おいおいおい勝っちゃったよマジかよー!日本建国史上初のW杯勝利!歴史的瞬間のを目の当たり!目の前でやってくれたぜ日本代表!初の代表観戦試合がW杯でしかも勝っちゃっていいんですかあ~!?いいんです!!(←川平ジエイ風)とまあhakapyon始め、スタンドは大興奮です。万歳三唱。ニッポンコール。

W杯(勝利のポーズ!)
★ニッポン、勝ちました~!勝利のポーズ!!

帰り道もニッポンコールは鳴り止みませんでした。
皆うかれています。六万人、総ハイテンションです。
hakapyonもニコニコして帰路につきましたが、そのうち選手へのコールが始まりました。「イナモト!」「ヤナーギサワ!」「ヒデ!ヒデ!」「トルシエ!」
このコールを聞いて、突如なんともいえないやるせない気持ちになりました。
「君たち・・・誰かの名前を忘れていませんか?」
そう、周りのサポが今日出場した選手のコールを続ける中、hakapyonの頭の中ではある選手の名前のコールが鳴り響いていました。

あんた、何で今ここに居ないのよ。
歴史的勝利も何も、君がいなければ私にとってはなんでもないんだよ。

ニッポン勝利モードで忘れていた、かえようの無い事実に気が付いてしまったのです。

こうやって勝利に浮かれたサポーターたちが、誇らしげに君の名前をコールするのを聞きたかったよ・・・とちょっぴりセンチメンタルローテンションにシフトダウンして、横浜国際競技場を後にしました。

しかし、hakapyonのW杯はまだ終っていなかったのです。
横国から少し離れた公園の土手。先ほどまでスタジアムに入れなかったサポーターたちがみなケータイでメールを打っていた、青い祭り会場だった公園。今は人っ子一人いません。静まりかえっています。遠くにブルーにライトアップされた横国が見えます。

そして、なんと土手に「岡田武史前日本代表監督」が立っているではないですか!
どうやらNHKのニュースの中継をしているようです。岡田さんはhakapyonのすぐ目の前にいます。周りには他にほとんど人がいません。軽く、パニックになりました。・・・またしてもhakapyonをサッカー好きにさせてしまった重要な方に「出逢ってしまった」のです。
岡田さんは、潔よくて好きです。頭が良くて、一見冷静に見えるが実はとても熱くて感激屋で情に厚いところや、誠実そうなところとか、かなり好きなタイプの方です。(ギャグセンスも好きです!)決して選手たちを責めることなく、ためすこと無く扱った姿勢も評価しています。
9年前のドーハの悲劇の時、岡田さんはNHKで解説をしていました。敗北が決まったとき、岡田さんは悔し泣きしていました。5年前、ジョホールバルの奇跡の時は代表監督でした。勝利の瞬間、ピッチに駆け出しました。その後は嬉し涙に溢れていました。4年前のW杯敗退は、誰よりも悔しかったことでしょう。

そして今、岡田さんはhakapyonの目の前で、日本代表の歴史的勝利を全国に伝えているのです。何故、今、この人が目の前にいるのでしょう。わずかな時間で、本日2回目の邂逅の意味を考えました。この、hakapyonの胸の中にある、1998年フランスから2002年の今日までの4年間の思いと、岡田さんへの感謝の気持ちをなんとかして伝えたい。それが今日、ここで岡田さんに出逢えた意味なのだ、と思いました。
ニュース中継終了後、意を決して、岡田さんのもとに駆け寄りました。
握手をしていただきました。力強い手でした。
「おめでとうございます、岡田さん!」サポーターが岡田さんに気付き、次々と声をかけてきました。そんな中で、主人が岡田さんに言ったひと言がhakapyonの胸にずしりと響きました。「岡田さんが基礎を作ったんですよね。」ああ、そうかあ。主人も4年前のことを忘れていなかったんだ。主人も岡田監督や城選手、4年前の代表メンバーのことを応援していたものなあ。
そんな主人のひと言に触発され、自然に岡田さんへの言葉が出ました。「今日の勝利は岡田さんたちのおかげです。ありがとうございました。」岡田さんたち、というところに、先人の代表の意味も含めたつもりですが、岡田さんには伝わったのでしょうか?とにかく、岡田さんはとても嬉しそうでした。にこやかにバスに乗り込まれました。

そうだ、これはみんなの勝利なんだ。今日まで4年間闘ってきたみんなで勝ちとったものなんだ。たとえピッチにいなかったにせよ、サポにコールされなかったにせよ、代表メンバーに選ばれなかったにせよ・・・今日の勝利は今までの歴史の積み重ねなんだ!城選手や岡田さん、その他4年前、いや、ドーハのメンバーたちの汗と涙が呼んだ勝利なんだ。

城くん、君は勝ったんだよ。

日本が勝ったときでさえ出なかった涙が、とめどなく溢れてきました。止まりませんでした。腕にしていたマリノスのリストバンドで涙を拭きました。(ああ、リストバンドってこうやって使うのね・・・と納得しました。)心の中に巣食っていたやるせないマイナスの気持ちや、4年間見守りつづけてきた思いが報われなかった切なさが、岡田さんとの出会いによって浄化されたのです。
と同時に、4年の長きに渡るhakapyonのささやかな闘いにも終わりを告げる時がきたようです。今日までの様々なシーンが、頭をよぎります。泣いたり、笑ったり、怒ったり、祈ったり・・・。はたして悲しいのか、嬉しいのかなんだか解らない感情で胸が一杯になりながら、帰路につきました。

hakapyon夫妻のチャリは、山下公園を目指して夜の新横浜を疾走します。
チャリを漕ぐ二人は日本初勝利と岡田さんとの邂逅にかなり浮かれ気味でしたが、ハマの街はさらにハイテンションでした!道行くサポから暴走族まで、青いユニ着てれば皆友達です。「おめでとう~!」「やったね!」「ニッポン!!」と夜の街中で声かけまくりのかけられまくりです。(族からも「ニッポン、ヤッタね!」と声をかけられました。こんな経験、生まれて初めてです)
青いシャツが誇らしくて、もう脱ぎたくない!と思った夜でした。ありがとう、日本代表!




© Rakuten Group, Inc.